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Part4 建材に求められる水密性能 その2.送風散水方式

機関誌「建材試験情報」2012年7月号~2016年4月まで連載していた基礎講座「雨/風と建築/建材」(全7回)をアーカイブしています。
(一部加筆修正)

Part4は2013年5月号からです。

1.はじめに

 前回のPart3では、『外壁や建具』の水密性能を評価する試験方法として圧力箱方式による試験方法を紹介しました。
 今回は『換気部材(換気ガラリなど)』を対象とした時の送風散水方式の試験について紹介します。
 『外壁や建具』は、雨が室内に侵入するのを防ぐためにあることを考えると、たとえわずかでも室内への漏水があってはいけません。このため、これらの水密試験では試験体全面に圧力を加えた状態での散水という非常に厳しい試験が要求されます。

 これに対して、換気ガラリや換気口といった『換気部材』は、その目的が外気を取り入れて室内の空気を排出することにあるため、当然のことながら室内外を貫通する空気の通り道が必要となります。これらの換気部材は、外壁や建具の様に気密性が高い物ではないため圧力箱方式で試験を行うことは意味がありません

 しかしながら、いくら換気を行うための部材といっても、室内へ雨水が侵入してもよいということにはなりません。このため、換気部材から室内への雨水の侵入を最小限に抑えるべく、その形状にはさまざまな工夫が施されています。こういった雨水の侵入を抑える工夫がなされた換気部材の水密性能を評価するための試験方法が、今回紹介する送風散水方式による試験方法です。

大型送風散水試験装置

2.水密性試験方法(送風散水方式)

 送風散水方式とは、試験体へ送風機で所定の風速に設定した風を吹き付けながら散水を行う方法で、試験体室内側への漏水を定性的、定量的に確認する方法です。

2.1 JSTM L 6401(換気ガラリの防水性試験方法)

 建材試験センターでは換気部材の水密性能を試験する方法として、建材試験センター独自の団体規格であるJSTM L 6401(換気ガラリの防水性試験方法)を2002年に制定しています。ここではこの試験方法を紹介します。

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雨風第四回_図1
図1 換気ガラリの防水性試験方法図

 図1に示す試験体取付壁に試験体をセットし、所定の散水量(前回Part3で説明したJISによる降雨量:240mm/h)及び段階的に風速(1段階継続時間:10分)を上げていった時に、試験体を通して室内側へ侵入する漏水状況を観察するとともに漏水量を計測します。

 室内側への漏水状況は表1のように表現します。漏水現象が「枠外への吹き出し」、「しぶき」、「あふれ出し」になると室内側の床をかなり濡らす状況になり、漏水量もかなりの量になります(写真1)。実際の建物に取り付けてある場合には、室内側に多くの水滴が飛散している事になり、近くに置いてある物に対して悪影響を及ぼす事になります。

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雨風第四回_表1
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雨風第四回_写真1
写真1 室内側の漏水状況(写真右側に換気ガラリ設置)
換気ガラリからの吹き出しで室内側に水溜りができている状況

 換気ガラリ以外の換気部材、例えば棟換気口や軒天換気口等に対しても、この方法を適用することができます。  この方式での試験では、一定時間連続して換気部材の開口部にダイレクトに強風雨が当たります。この状況は、自然界において滅多に起こらない非常に厳しい条件です。

2.2 建築工事標準仕様書JASS12(屋根工事)の方法

 一方で、実際の降雨の状態を再現しようとして考案された方法が建築工事標準仕様書JASS12(屋根工事)の「5.3強風を伴う降雨に対する水密性評価のA:送風散水方式による評価」という方法です。この方式は、基本的には瓦屋根を試験対象としていますが、壁等の垂直面材の試験評価も可能です。(改定済み)  一般的な瓦屋根の構成は、室内側から野地板、防水材、垂木、瓦屋根材となっていますが、この試験方法では、瓦屋根材からの漏水性状の観察が目的のため、防水材は除き、さらに野地板の代わりにアクリル板を設けて室内側からの観察が行えるようにします。試験ではアクリル板を設置した試験架台に瓦屋根を施工し、散水量は式①に、試験風速は屋根の平均地上高さにより式②及び式③にて決定します。

S=2.0×W・・・①
ここに、S:散水量(/)、W:送風機吹き出し口の幅(m

V = 1.7 ( H 450 ) 0.2 V R H>5m・・・②
V = 0.69 V R H5m・・・③
ただし、H:屋根の平均地上高さ(m
     V R :建築地域における降雨時、最大平均風速の10年間再現期待値(m/s

 JASS12の試験方法では、試験継続時間が15分と定められており、試験実施中はアクリル板越しに、室内側に侵入する漏水状況を観察します(図2に装置概要図を示します)。

 送風散水試験実施後、水量測定用の穴よりアクリル板に付着している(または流れ出している)水滴をふき取り、質量を量ります。式④及び⑤より強風雨浸水量を算出し、表2に示す屋根葺材の水密判定基準に従い、試験を行った瓦屋根の性能を確認する事ができます。

 最近の瓦屋根は、瓦同士の隙間が小さくなっており水密区分Ⅱ-1相当のものが多くなっていますが、区分Ⅰに該当するものはほとんどありません。

F = QT 15 × W   L1.5H/sの場合・・・④

F = QT × 1.5 H 15 × W × s × L   L1.5H/sの場合・・・⑤
ここに、F:強風雨浸水量(mℓ/
     QT:試験時間中の総浸水量(mℓ
       H:送風機吹出口の高さ(m
       L:試験体水平距離(m
                  S:屋根勾配(tan値)

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雨風第四回_表2
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雨風第四回_図2
図2 装置概要図

3.おわりに

 水密性能試験方法は大きく2種類(圧力箱方式及び送風散水方式)の方式があることがお分かりいただけたかと思います。これらの試験方法で様々な建築部材の強風雨に対する防水性能を検証する事ができます。
 次回は、建築部材に対する耐風圧試験を紹介します。

用語説明

  1. 換気ガラリ、換気口:
     給気又は排気により、建物内の空気環境を良好に保つための外壁の開口部に設ける部材
  2. 強風雨浸水量:
     強い風雨によって屋根材の嵌合部等から室内側に侵入した水滴の量
  3. 建築地域における降雨時、最大平均風速の10年間再現期待値:
     地上高さ10mの地点で、10年に1度の割合で発生する時間雨量11mm以上の際の最大平均風速値

【参考文献】

  1. JSTM L 6401(換気ガラリの防水性試験方法)
  2. 建築工事標準仕様書・同解説 JASS12

<執筆者:中央試験所 環境グループ(当時) 松本智史>