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Part6 建材に要求される耐風性能と水密性能 耐風圧性試験方法について(2)

機関誌「建材試験情報」2012年7月号~2016年4月まで連載していた基礎講座「雨/風と建築/建材」(全7回)をアーカイブしています。
(一部加筆修正)

Part6は2015年5月号からです。

1.はじめに

 Part5では、建材の耐風圧性試験のうち、建具を対象とする試験方法について紹介しました。今回は、建物外皮に占める面積の最も大きい屋根材および壁材を対象とする試験方法について紹介します。
 屋根材や壁材には、耐風圧性・水密性・耐火性・断熱性・遮音性など、さまざまな性能が求められます。このうち耐風圧性は、建物の内部空間を安全かつ快適に維持するために必要な性能項目の一つです。建築基準法施行令第39条第1項においても、「屋根葺き材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものは、風圧並びに地震その他の振動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。」と規定され、屋根材および壁材の風圧に対する安全性の確保が求められています。
 また、平成12年建設省告示第1454号および1458号では、建物の高さ・形状・場所などの条件を用いることで、各部位における風荷重(以下,設計用風圧力という)を算出する方法が示されています(算出方法について詳しくは、Part2をご覧ください)。この方法で求められる設計用風圧力を最低基準値と捉えれば、屋根材および壁材は、その風圧力において脱落・破壊が起きないものとしなければならないと考えることもできます。
 このような風荷重に対する屋根材および壁材の強度を検証する方法が耐風圧性試験です。ここでは、動風圧試験装置による各種屋根材および壁材の耐風圧性試験方法について紹介します。

2.屋根材および壁材の耐風圧性試験方法

2.1 折板屋根

 折板屋根の耐風圧性試験方法は、鋼板製屋根構法標準(SSR2007) 第4章 折板屋根の試験・評価 4.4耐風圧性試験1) に規定されています。試験には、図1に示すような動風圧試験装置を使用します。

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雨風第六回_図1
図1 動風圧試験装置

 空気の圧力を等分布に載荷していくことで、屋根材の吹き上げ方向に対する強度の確認を行うことが可能です。この基準では、次の3つの加圧方法が規定されています(図2参照)。

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雨風第六回_図2
図2 加圧段階(文献の図4.4.1¹を基に作図)

1)静圧試験(安全確認試験)
 圧力0から設計用風圧力まで段階的に試験体を吹き上げ方向へ加圧し、破壊・脱落がないことを確認する試験となります。
2)脈動圧試験
 圧力0から設計用風圧力の範囲で脈動圧を加える試験となります。実際に生じる風の強弱を想定した試験といえます。
3)静圧試験(破壊試験)
 圧力0から試験体が吹き上げ方向へ破壊するまで段階的に加圧し、破壊強度(終局耐力)を求める試験となります。
 これら3つの加圧方法は、試験の目的に応じて選択することになります。また、この試験では、圧力によって生じる試験体の異常を観察することはもちろん、図3に示すような位置で変位ひずみの測定を実施します。変位の測定を行うことで、折板のたわみ、折板と梁間の相対変位および残留変位を、ひずみの測定を行うことで、測定した部位の応力を求めることができます。
 なお、この試験で用いられる圧力の単位は、N/㎡またはPaとなります。また、試験体の大きさは、長さ方向を1スパンまたは2スパン、幅方向を5山以上とったものが原則となっています。このうち評価対象は、試験体中央部となります(図3参照)。

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雨風第六回_図3
図3 折板屋根の試験体および測定位置の例
(長さ方向1スパン、幅方向6山の仕様)

2.2 折板屋根以外の金属製屋根材

 折板屋根以外の金属製屋根材の試験についても、2.1で示す試験方法に準じて行うことができます。ただし、折板屋根と折板以外の金属製屋根材では断面構成が異なるため、適当な試験を行うためには試験体の製作に工夫が必要となります。
 折板屋根は、主に折板・タイトフレーム・梁で構成されますが、動風圧試験装置により等分布荷重を加えた場合、主に折板に圧力が加わることになります。実際の風が屋根材に当たる場合、圧力エネルギーとして最初に負荷がかかるのは葺き材です。したがって、2.1の試験方法は、葺き材である折板に直接圧力を加える方法となるため、適当であると考えられます。
 一方、折板屋根以外の金属製屋根材は、葺き材・防水材・野地板・下地材(母屋材など)によって構成されることが一般的です。このような仕様の屋根材に対して、動風圧試験装置により等分布荷重を加えると、野地板など、葺き材よりも室内側に位置する気密性の高い材料に圧力が集中的に加わってしまう恐れがあります。この場合、葺き材には圧力が直接作用しなくなるため、適当な試験方法とはいえません。この問題を解消するため、この標準では、葺き材に直接圧力が加わるように、野地板に孔を設けるまたは野地板を設置しない試験体とすることが規定されています(図4参照)。

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雨風第六回_図4
図4 折板屋根以外の金属製屋根材の試験体例
(野地板に孔を設けた仕様)

2.3 瓦屋根材

 瓦屋根材は、瓦間のすき間が大きいので、そのままでは等分布の圧力を加えることが難しい建材です。そのため現状では、瓦屋根材を対象とする動風圧試験装置による耐風圧性試験方法は規定されていません。
 瓦工業組合では、瓦1枚1枚をワイヤーで連結し、それを1か所に集めて、強度試験機で機械的に引っ張る試験を標準としています。こちらは建築研究所が監修している試験方法です。
 しかし、2.2と同様に、試験体の作製を工夫することで、動風圧試験装置による試験を行うことも可能です。具体的には、下地材(母屋材および垂木)と瓦の間にビニルシートを設置します。ビニルシートは、気密性と柔軟性に優れているので、圧力を加えた際に瓦屋根材の形状に合わせて密着させることができます。これにより、瓦全体に等分布の圧力を加えて試験を行うことができます。

2.4 壁材

 壁材の耐風圧性試験方法は、鋼板製外壁構法標準SSW2011 第2章 設計 2.5.6 鋼板製外壁全体を対象とした試験2)で規定されています。試験方法はSSR2007とほぼ同一です。試験対象が外壁となるため、動風圧試験装置は試験体を地面に対して垂直に設置できるタイプのものとなります。

3.おわりに

 Part5~Part6では、動風圧試験装置による種々の耐風圧性試験方法を紹介しました。耐風圧性試験にはさまざまな試験方法・条件がありますが、適切な試験・評価を行うためには、試験対象や目的に応じた試験方法・条件を選定することが大切です。
 次回Part7では、動風圧試験装置以外の試験方法について紹介します。

【参考文献】

  1. 鋼板製屋根構法標準(SSR2007):独立行政法人建築研究所監修,鋼板製屋根構法標準改正委員会編集,pp.162-171,2008.1
  2. 鋼板製壁構法標準(SSW2011):独立行政法人建築研究所監修,鋼板製屋根構法標準改正委員会編集,pp.72-82,2011.2

<執筆者:中央試験所 環境グループ(当時) 松本知大>