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Part1 鉄筋継手の種類と歴史

建材試験センターの機関誌「建材試験情報」で2014年8月~2015年11月にかけて連載していた「鉄筋継手の基礎講座」をアーカイブしていきます。(一部加筆修正)
PART1は2014年8月号からです。

1.はじめに

 わが国における土木・建築構造物の多くは、鉄筋コンクリートで造られています。
 鉄筋コンクリートは、圧縮力には強く引張力に弱いコンクリートを、圧縮力には弱く引張力に強い鉄筋で補強し一体化した合理的な構造になっています。コンクリートと鉄筋を複合することにより、圧縮力にも引張力にも強い構造になるだけでなく、単独では大気中で発錆し、高温時には強度が低下する鉄筋をコンクリートが保護するため、優れた耐久性や耐火性を備えた複合材料となります。
 コンクリートは、建設現場で自由な形状・寸法に成型できることが大きな特徴です。一方、鉄筋は、形状・寸法が規格化された工場製品であり、定尺物(所定の長さの製品)として建設現場に搬入されます。従って、建設現場での加工継手(長さを増すための2材の接合)が必要不可欠となります。
 鉄筋の性能は、母材(鉄筋自体)の品質に左右されますが、継手部分の性能も構造物の構造安全性に大きな影響を及ぼします。また、同じ継手でも作業条件などにより、その性能は大きく異なります。
 本講座では、この鉄筋継手を取り上げ、次の5編に分けて紹介します。Part1では、鉄筋継手の種類について、その歴史背景などを含めて概説します。
 Part1:鉄筋継手の種類と歴史
 Part2:ガス圧接継手
 Part3:溶接継手
 Part4:機械式継手
 Part5:鉄筋継手の品質管理

2.鉄筋継手の種類

 建築用語辞典によると、継手とは「木材や鉄材など建築物、工作物の部材における長さを増すための2材の接合をいう。」と記載されています。
 鉄筋継手工法は、重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手の4種類に大別されます。それぞれの工法の概要は表1のとおりです。

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鉄筋継手第一回_表1

3.鉄筋コンクリートの歴史

 鉄筋継手の歴史に触れる前に、鉄筋コンクリートの歴史について簡単に紹介します。
 鉄筋コンクリートの歴史は古く、今から160年余り前にフランスの造船所技師であったランボー(J. L. Lambot)が1855年(安政2年、わが国ではマグニチュード7.0~7.2の「江戸地震」が発生した年)の「第1回 パリ万博」に鉄筋コンクリート製のボートを出品したのが最初といわれています。その後、フランスの庭師であったモニエ(J. Monier)が、植木鉢の耐久性を高めるために、金網にモルタルを流し込み製作する方法を考案しました。モニエは、この植木鉢を1867年(慶応3年、わが国では江戸幕府第15代将軍徳川慶喜が朝廷に政権を返還する「大政奉還」が行われた年)の「第2回 パリ万博」に出品し、同年に「モニエ式配筋法」として特許を取得しました。この技術は、建築物の床板、壁、柱、梁へと応用され、モニエは今日の鉄筋コンクリートの基礎を築いた人物といわれています。その後、鉄筋コンクリートは、ドイツからイギリス、アメリカへと伝わり、さまざまな配筋工法に発展していきました。
 わが国で最初の鉄筋コンクリートが施工されたのは、1890年(明治23年、わが国では明治22年に発布された明治憲法の下で帝国議会が開設された年)に行われた横浜港岸壁のケーソン工事といわれています。建築物では、1904年(明治37年、満州で「日露戦争」が開戦した年)に海軍技師で構造エンジニアの真島健三郎(佐世保海軍経理部建築課勤務)が設計した佐世保鎮守府内のポンプ小屋といわれています。その後、1906年(明治39年)には、土木技術者の白石直治(農商務省、東京府勤務)により、兵庫県神戸市の神戸港に面する東京倉庫で本格的な建築物が施工され、1916年(大正5年)には、長崎県端島(通称:軍艦島)にわが国最古の集合住宅が建設されています。

4.鉄筋継手の歴史

4.1 重ね継手工法

 明治から大正期にかけて建設された初期の鉄筋コンクリート建築物では、鉄筋の端部同士を所定の長さに重ね合わせてコンクリートと一体化させる「重ね継手」が主に使用されていましたが、この時代に建設された建物の解体調査によると、さまざまな継手が使用されていたことが報告されています。例えば、大正時代では、名古屋の愛国生命ビルにおいてY字型鉄筋を重ねクリップで締めて継ぐ「クリップ継手」が施されていたという記述注1)もあります。
 明治から大正期の主な鉄筋継手工法を図1に示します。

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図1 明示から大正期の主な鉄筋継手工法¹

 その後、鉄筋コンクリート構造物は、時代と共に大規模化されていきました。これに伴い、鉄筋は経の太いものが求められ、使用される量も増えていきました。このような構造物で従来の重ね継手を使用すると、鉄筋が混み合いコンクリートの充填が難しくなるなどの問題が生じるようになりました。このため、鉄筋を重ねずに継ぐ工法が求められるようになり、ガス圧接継手、機械式継手、溶接継手など、さまざまな工法が開発されていきました。

注1)豊島光夫:鉄筋最前線-鉄筋工事の「なぜ?」を解きほぐす,建築技術,1999年3月

4.2 ガス圧接継手工法

 ガス圧接は、1939年(昭和14年)アメリカのアダムス(L.Adamus)が鉄道レールの接合に使用したのが始まりといわれています。わが国では、この技術を1940年(昭和15年)後半から大井博士(日本国有鉄道 鉄道技術研究所)らが鉄道レールの接合を目的として研究を開始しました。その後、この鉄道レールのガス圧接は鉄筋の接合に応用され、1952年(昭和27年)には地下鉄渋谷車庫土留め擁壁工事でφ19~25mmの鉄筋の接合用として、ガス圧接継手工法が採用されました。これが、わが国初の実工事における鉄筋のガス圧接施工です。翌1953年には、国鉄日立駅鉄道橋工事にも採用され、その後、さまざまな工事でガス圧接継手工法が使用されるようになりました。現在ではφ16mmの鉄筋まで施工が可能な技術となっています。

4.3 機械式継手工法

 機械式継手工法の種類はさまざまですが、大正期の初期は、「パイプ継手」、「クリップ継手」、「フック式継手」が使用されていました。 1940年代(昭和16年:太平洋戦争勃発、昭和20年:第二次世界大戦終戦)には、「溶接継手」、鉄筋端部にねじを切った「ターンバックル継手」、「スリーブナット継手」が使われたという記録もあります。  高度成長期を迎えた1970年台には、鉄筋コンクリート構造物の大規模化・高層化に伴う工法開発の一環として、太径鉄筋の使用、鉄筋工事の合理化を目的としたプレキャスト工法の開発、先組み鉄筋工法の開発などが進むと共に、これらの工法に相応しい継手として、さまざまな機械式継手工法の開発が行われていきました。この頃、重ね継手とガス圧接継手以外は特殊継手と呼ばれ、個々に建設大臣の認可が必要とされました。1981年5月に建築基準法施行令の一部が改正され、建設省住宅局指導課長が認定を行うこととなりました。これを受けて、建設会社主導で工法の開発が進められ、40数種類という多くの工法が開発されました。  1990年代になると、鉄筋コンクリート建築物が更に大規模化・高層化することにより、太径、高強度鉄筋を用いる建築物が増加すると共に、新たな機械式継手工法の開発も行われました。最終的に機械式継手工法は、ねじ系・モルタル充填系・圧着系の3種類に絞られ、鉄筋メーカーの主導による開発が行われるようになりました。  現在使用されている主な機械式継手の形状を図2に示します。

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鉄筋継手第一回_図2
図2 主な機械式継手の形状

4.4 溶接継手工法

 わが国での鉄筋の溶接継手の歴史は比較的浅く、1940年代後半から使用されはじめたといわれています。初期の溶接継手は「フレア溶接継手」で、その後「突合せ溶接」が使用されるようになりました。現在、鉄筋の突合せ溶接には、「エンクローズ溶接(エンクローズ・アーク溶接の略称)」という、鉄道用ロングレールの現地溶接から派生した技術が普及しています。  エンクローズ溶接には、被覆アーク溶接によるものと、半自動溶接によるものがあります。前者は、1950年代後半にオランダで鉄道用レールおよび太径丸棒を対象に開発されたもので、わが国では1963年から鉄道用レールの現場溶接に使用されました。後者は、1960年頃にオランダとベルギーで開発されたもので、「エレクトロンガス溶接法」という名称で厚板構造物の溶接に使用されていました。わが国では、1974年(昭和49年)にD51の鉄筋継手の溶接に適用され、現在に至っています。  溶接継手工法の一例を図3に示します。溶接継手は、直接継手間接継手に大別されます。直接継手は、諸外国で使用されており、わが国でも使用されていた鉄筋端面を開先加工して積層溶接する方式とわが国で溶接継手工法の主流となったエンクローズ溶接とがあります。間接継手は、鋼板又は鉄筋を用いたフレア継手(円弧と円弧又は円弧と直線でできる開先形状の継手)があります。

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鉄筋継手第一回_図3
図3 溶接継手工法の一例

【参考文献】

  1. (公社)日本鉄筋継手協会:鉄筋継手マニュアル,2005
  2. (公社)日本鉄筋継手協会:鉄筋の熱間押抜ガス圧接法,2008
  3. 林静雄,中澤春生,矢部喜堂:鉄筋継手講座 ①鉄筋継手の歴史と現在の法的な位置付づけ,コンクリート工学,VoI.49,No.2,2011.2
  4. 中村操:過去の災害に学ぶ(第7回),広報ぼうさい,No.33,2006.5

<執筆者:本部事務局 技術担当部長(当時) 小林 義憲>

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