Part4 機械式継手
建材試験センターの機関誌「建材試験情報」で2014年8月~2015年11月にかけて連載していた「鉄筋継手の基礎講座」をアーカイブしていきます。(一部加筆修正)
PART4は2015年7月号からです。
機械式継手は、土木・建築構造物の大型化に伴う鉄筋の太径化に際し、施工の合理化・簡略化等を目的として開発された継手工法の一つです。機械式継手は、ガス圧接継手に次いで施工数量が多く、継手工法別のシェアでは、ガス圧接継手が約70%、機械式継手が約20%といわれています。
1.機械式継手の原理
機械式継手とは、鉄筋を圧接装置や溶接装置などを使用し直接接合するのではなく、鋼管(カプラーやスリーブ)と異形鉄筋の節との噛み合いを利用して接合する工法の総称です。したがって、継手対象の鉄筋は、異形鉄筋に限定されます。また、応力を伝達するために特別な鋼管が必要となるため、他の継手と比較してコスト高となるという特徴があります。
機械式継手のメカニズムは、図1に示すとおりであり、一方の鉄筋に生じた引張力を鉄筋の節から鋼管を介して他方の鉄筋に伝達させるというものです。したがって、引張力を確実に伝達させるためには、スリーブへの挿入長さの管理が必要となります。また、引張力は、鉄筋表面の節からせん断力として伝達されるため、噛み合わせる節の数の管理も重要となります。
異形鉄筋の節の間隔(ピッチ)は、製品の生産者によって異なるので、接合する鉄筋の形状に合わせた管理が必要です。一般に、機械式継手の場合は、おおよそ4山から6山の節に噛み合っていれば引張力は伝達できるといわれています。
なお、挿入長さ以外に、鉄筋を固定するため、グラウトなどの充填材を注入する工法もあり、それぞれの管理項目が定められています。
2.機械式継手の種類
機械式継手は、応力伝達機構別、工法別に分類すると、①ねじ節鉄筋継手、②端部ねじ加工継手、③鋼管圧着継手、④充填式継手、⑤併用継手、⑥その他 の6種類に大別されます(図2参照)。
2.1 ねじ方式継手(ねじ節鉄筋継手)
ねじ節鉄筋継手(図3、図4参照)は、機械式継手の中で最も普及している工法です。
この継手は、鉄筋表面の異形形状が熱間圧延でねじ状に成形された異形鉄筋を、内面にねじ加工された鋼管(カプラー)によって接合する継手工法です。鉄筋のねじ節とカプラーの節との隙間にグラウト材を充填して固化して一体化します。カプラーの両端に養生ナットを使用する工法と養生ナットを使用しない工法があります。
2.2 端部ねじ加工継手
端部ねじ加工継手(図5参照)は、鉄筋の端部に摩擦圧接などにより接合したねじ部を相互に突き合わせ、カプラーによって接合した後に、固定ナットで締め付け、一体化する継手工法です。
2.3 モルタル充填継手
モルタル充填継手(図6参照)は、継手部に配置した内面をリブ加工された継手用鋼管(スリーブ)と異形鉄筋との隙間にモルタルを充填して接合する継手工法です。
2.4 併用継手
併用継手は、ねじ節鉄筋継手、モルタル充填継手及び端部ねじ加工継手を併用した継手工法です。
3.機械式継手の特徴
機械式継手は、これまでに紹介したガス圧接継手や溶接継手と異なり、専用の圧接装置や溶接装置を使用することなく異形鉄筋を接合できる点が一番の特徴です。ただし、応力を伝達するための特別な鋼管や充填材が必要となるため、他の継手に比較してコスト高となるという短所はあります。
また、施工に際して、機械式継手作業者には特別な技量は必要なく、機械式継手(製品)の製造会社が実施する技術講習を受講し、作業資格者として認められた者であれば、適切に施工できることが大きな特徴と言えます。更に、施工にあたり天候の影響を受けにくく、工期の安定(短縮)が図れることも一つの特徴として挙げられます。
4.機械式継手の検査
ここでは「鉄筋継手工事標準仕様書 機械式継手工事(2017年)」の検査内容を紹介します。他の仕様書や要領書によっては検査内容が異なりますので注意してください。
機械式継手の試験・検査には、施工前試験、受入検査があり、各工法で定められた方法によって行われます。
施工前試験は、機械式継手工法及びすべての鉄筋の組み合わせごとに継手試験片を作製し、その試験片数は3本としています。試験方法は、日本鉄筋継手協会規格JRJS 0011(A級機械式継手の試験方法及び判定基準)に基づいて引張試験を行います。
受入検査は、施工された継手部が必要十分な品質を有しているか否かを工事の発注側、すなわち元請施工者が確認します。その方法としては外観検査や、超音波によりスリーブやカプラーに挿入された鉄筋の挿入長さを測定する超音波測定検査があります。超音波測定検査は、JIS Z 3064(鉄筋コンクリート用機械式継手の鉄筋挿入長さの超音波測定試験方法及び判定基準)に基づいて行います。
5.用語解説
スリーブ:機械式継手に用いる鋼製又は純鉄製の筒状の継手部品。
カプラー:スリーブのうち、内面のほぼ全長にわたり雌ねじ加工された継手部品。
グラウト・モルタル:鉄筋から鋼管(カプラー、スリーブ)に応力を伝達するための充填材。
監理責任技術者:工事監理に従事する技術者のことで、建築基準法第2条第11項で定義する工事監理者、(一社)日本建築学会「建築工事標準仕様書」で定義する監理者、(公社)土木学会「コンクリート標準示方書」で定義する責任技術者。
施工前試験:使用材料、継手装置・器具類、施工条件、作業手順及び機械式継手工法の性能などの確認を目的とする試験。
超音波測定検査:JIS Z 3064(鉄筋コンクリート用機械式継手の鉄筋挿入長さの超音波測定試験方法及び判定基準)に基づいて、スリーブやカプラーへの鉄筋の挿入長さを測定する検査。
【引用文献または参考文献】
- (公社)日本鉄筋継手協会 鉄筋継手マニュアル, 2005年 p.97
- (公社)日本鉄筋継手協会 鉄筋継手マニュアル, 2005年 p.96
- (公社)日本鉄筋継手協会 鉄筋継手工事標準仕様書 機械式継手工事, 2017年 p.17
- 林静雄・中澤春生・矢部喜堂:鉄筋継手講座③機械式継手および溶接継手, コンクリート工学,Vol49,No4,2011,4
<執筆者:本部事務局 技術担当部長(当時) 小林 義憲>